「七月だから……ユーリ」

 

 息を切らしながらも、彼女は笑った。

 

「いい名前ですねぇ……。ユーリ、ゆーり、ゆーちゃんかぁ…」

 

 汗だくの手でかなり膨らんだ腹をさする。

 

「……触ってみます?」

 

 彼女の申し出に少し戸惑った。

 笑顔に促され、恐る恐る手を伸ばす。

 

「ね?沢山動いているでしょう?早く出たい〜って、精一杯。もうすぐ生まれてくるんだ

ものねぇ……」

 

 腹の中の子供に話しかけるように

 優しく優しく

 

「…私の理想……きいてくれますか?」

 

 頷いてみせると、彼女は目を細めて話し出した。

 

「男の子だから元気なのがいいの。勉強はできなくてもいいから。休みの日とかは友達と

野球をして……。人一倍正義感があって、自分の意志を貫き通せる強い子。誰よりも優し

くて強い子がいいの」

 

 強く

 優しく

 誰よりも

 何よりも

 彼女の手に自分の手を重ね、微笑む。

 

「俺もそうなればいいと思いますよ」

 

 

 あれから15年がたつ。腹の中の子供は成長して再び俺の前に現れた。まさか”ユーリ”

という名前が採用されるとは思わなかったけれど。

「なーにやってんだよ、コンラッド。遠くの方なんて見ちゃって。恋煩い?」

 ユーリの声。15年間、ずっとずっとききたかった声だ。

 ずっとずっとそばにいて護ると誓った。

 今度こそ間違えないように、壊さないように、と。

「まぁ、似たようなものですね」

「え、マジ!?相手は誰っ。コンラッドもてるからなぁ。美人さん?スタイルいい?それ

ともたくましい系?あ、女装したヨザックとか洒落にならないことは言うなよ!」

「う〜ん…。秘密…にしておきましょうかね」

「何だよそれ〜。秘密主義反対っ」

 俺は苦笑し、むくれるユーリの頭を撫でた。大きな黒い瞳が俺を見上げる。

「何」

「いえ……。大きくなったなぁ、と」

「?」

 目を瞬かせるユーリ。

 元気で

 野球が好きで

 人一倍の正義感

 強く

 優しく

 自分の意志を貫き通す―――

「さぁ、外に出ましょうか。今日はよく晴れてますよ。絶好の野球日和だ」

 

 大丈夫。

 貴女の息子は貴女の理想通りに育ってますよ。

 

 誰よりも強くて優しい子に―――

 

                                 おわり

 

コンユーっていうよりは、コンラッド父さんって感じの話。

ユーリママとの会話を勝手に妄想(笑

ほんとにコンラッドって優しい兄ちゃんって感じがして好きですv


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