がままな君に


 トンネルを抜けるとそこは雪国でした。

 て、違う。やり直しやり直し。

 ドアを開けるとそこには三男がいました。

 それもかなりご立腹なご様子で。

 おれは何も言わずにドアを閉める。

「あれ、どうかしましたか?」

 ドアに貼りついて固まっているおれを不審に思ったのか、通りすがりの次男が声をかけ

てきた。

「わがままプーがご乱心だ」

「は?」

 おれはコンラッドの両腕をがしっと掴む。

「おれ何かしたか!?最近お近づきになったのってゆーと、めえめえ鳴く猫だし!何、そ

れでも尻軽とか言われんの!?って、まだ言われてないし、フットワークが軽いのはいい

ことだと思うけどね、おれはっ」

「記憶にないんじゃないか?夢遊病とか」

「夢遊病!!」

 英語で言うとスリープウォーキング。

 それってあれですか。夜中に徘徊するやつですか?

 知らぬ間におれは城内を歩きまわり、使用人と密会。

 まぁ、大変!だんな様が、だんな様がぁ〜!!みたいな展開に!?

「んなバカなっ!」

「まぁ、本人にきいてみるのが一番でしょう」

「え?ちょ……っ」

 コンラッドはドアを開け、おれを部屋に押し込んだ。そしてすぐに閉めてしまう。つい

でに鍵のかかる音。つーか何で鍵なんて持ってるんですか、ウェラー卿?

「裏切り者っ」

 鬼とか悪魔とかタスマニアデビルとかウーパールーパーとか一しきり喚いた後、恐る恐

る振り返ってみた。そこには顔を怒りに染めた美しき天使―――

「尻軽」

 あ、やっぱり?

「えーっと。おれ何かしたっけ?」

 覚えがないにも関わらず冷や汗がでる。

 ちょっと待て、おれ。これじゃ尻軽だと認めているようなものじゃないか。

「これだ、これっ!」

 ヴォルフラムはおれに何かを投げた。

 お、なかなかいいピッチング。おれはそれをキャッチし、顔をしかめる。

「あみぐるみ……?」

「兄上にもらったのだろう。お前は誰からでも簡単に物をもらいすぎだ」

 またきたよ わがままプーの やきもちが

 一句詠んでみた。おれはあみぐるみをいじくりながら苦笑する。

「あのなヴォルフ。これ、おれが作ったんだけど」

「何!?」

 これで納得してくれるかと思ったが―――

 甘かった。ええ、甘かったですとも。

「兄上から手取り足取り教えてもらったというのか!?ぼくというものがありながら!」

「だーかーらぁ〜」

 おれはあみぐるみをヴォルフの胸に押し付けた。

「それ、お前の」

「え?」

「今更だけど胸飾りのお礼だよ。材料費は大してかかってないけど、魔王陛下の手作りと

かいってプレミアがつく…かな?…かも」

 ヴォルフはあみぐるみを抱いたままきょとんとしている。

「これをお前が……?ぼくの為に?」

「そ。意外に難しいのな、それ。グウェンを尊敬するよ」

 いや〜、慣れないことしたから肩が凝った凝った。

 ヴォルフはふんと鼻を鳴らす。

「お前にしては気がきいているな」

「そりゃどうも」

「まぁ、もらってやってもいい」

 相変わらず態度がでかいが機嫌はなおったようだ。天使のご機嫌取りも大変である。

「ところでこれは何を作ったんだ?新種の生物か?」

「え、黒猫なんだけど。見えない?」

「見えない」

 おかしいな。

 最高傑作だと思ったのに。

 

                                おわり

 

初!まるマ小説はヴォルフとユーリの話。

コンラッドとユーリコンビも好きですが、この二人も好きですv

微笑ましいですよね。夫婦漫才(笑

まるマといえばユーリの一人称なので、今回はそれで書いてみました。

ヴォルフ愛です☆


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