ミノトナリ


「あ、おはようございます。トーマス様」

「おはよう、セシル」

 ぺこりと頭を下げるセシルにトーマスは笑顔を返した。

「いつも早いね。眠くないの?」

「はいっ。お城を護るのが私の仕事ですから」

 胸をはるセシル。

「トーマス様こそ、もう少し寝ててもいいんじゃないですか?お疲れでしょうし……」

「いや…だってさ。城主が朝寝坊じゃかっこつかないよ」

 トーマスは頭をかき、照れ隠しのように笑ってみせる。そして地面に腰をおろした。

「トーマス様」

「ん?」

「少しお話してもいいですか?」

「あ、うん。いいよ」

 トーマスの隣に座り込むセシル。風が二人の髪を揺らした。

「気持ちいですね〜」

「うん」

「やっぱり平和なのが一番ですよね」

「そう……だね」

 トーマスは曖昧な返事をする。

 まだ戦いの真っ只中。

 いつ城が戦乱に巻きこまれるかわからない状態なのだ。

「早く戦いなんて終わらせなくちゃ……」

 トーマスは膝の上で拳を握り締める。その手はわずかに震えていた。

「でも……僕に何ができるのかな。僕はヒューゴ君達みたいに強くないし……。何の役に

も……」

 そこでトーマスは言葉を止めた。セシルが自分の手をトーマスの手に重ねたのだ。

「…セシル?」

「トーマス様は充分、みんなの役にたってます」

「え……」

「だってそうでしょ?このお城の城主様がトーマス様じゃなかったら、こんな素敵なお城

にはなりませんでした。トーマス様が居たから皆が集まって、お店も沢山できて、皆笑顔

で居られるんです。それに……」

 セシルはトーマスの顔を見上げ、にこっと微笑んだ。

「みんな、トーマス様が大好きなんですよ」

「……」

 トーマスは黙り込み―――

「……私も……トーマス様、大好きです」

「え……っ」

 セシルの言葉にたちまち真っ赤になった。セシルはトーマスの肩に頭を預ける。

「セ……セセセセセシル!?」

 トーマスの声が上ずった。

「トーマス様の隣が、私一番落ち着きます」

「……」

 トーマスは岩のように固まったまま、視線を宙に泳がせる。

 セシルのはきっと天然なのだろうが……

 ――う〜……

 鼓動が速い。

 トーマスは緊張で震える唇を動かす。

「あ…あのさ……セシル……?」

「……」

「あれ?」

 違和感を覚え、トーマスは顔を横に向けた。そこには規則正しい寝息をたてているセシ

ル―――

「やっぱり、疲れてたんだ」

 トーマスは苦笑した。どうやら彼の隣が落ち着くというのは本当らしい。

 どこまでも無防備で幸せそうな寝顔。

 それを護りたいと、心から思う。

「……見つけたよ。僕にできること」

 こんな僕にでもできること。

 

 君の隣で

 僕は君の安らぎでいよう―――

 

                         おわり

 

ほのぼの〜っと書きました

このコンビはほんとにいいですよね。

微笑ましいというか、見ていて幸せな気持ちになれます


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