風が前髪を揺らした。これから歩む道を予期するかのような向かい風。
魔術師の塔を背に、黙ったまま歩き続ける。
ただ見るのは正面のみ。
後ろを振り返らないように、振り返らないように―――
「……」
ふと、ルックは足を止めた。正面に人影がある。
黒髪に赤い服。手には棍―――
「……全然変わってないね」
「君も大して変わってないだろ」
ルックの呟きに、レン・マクドールは苦笑しながら返した。
約15年ぶりの再会だ。
「どうしてここに?」
「さぁ?」
肩をすくめるレン。ルックは顔をしかめた。
「さぁって……何それ」
「う〜ん……。何かさぁ……ほんとに何となくなんだけど、ここに来たくなってね」
「……」
”何となく”
レンのその言葉は必ず何らかの意味を持つことをルックは知っていた。
もしかしたら感じるものがあったのかもしれない。同じ真なる紋章の継承者同志、どこ
かでつながりはあるはずだ。
「君こそどこに行くつもりなんだい?」
そう問うレンの瞳は全てを見透かしているようだった。それを真っ直ぐに受け止め、ル
ックは答える。
「―――全てを終わらせに」
すぐにその言葉の意味することがわかったのだろう。レンは小さく笑った。
「君らしいね」
「止めるかい?」
「いや……」
レンは首を横に振る。
「止めたいのは山々なんだけどさ。僕が言ったってやめる気はないんだろ?」
「まぁね」
「後悔……しない?」
「覚悟はできてる」
「そう……」
ルックの瞳は驚くほど真っ直ぐだ。
レンはふうと息をつき、彼の肩をぽんっと叩いた。
「ならいいよ。行ってきな」
「何のつもり……」
「いいじゃん。見送る人の居ない旅立ちなんて寂しいだろ?」
「……」
ルックは溜息をついた。結局レンのペースに乗せられている。共に戦った時と同じよう
に。
再び歩き始めた彼の背中に、レンが言葉を投げかけた。
「また、会えるといいね」
ルックは何も言わない。レンも始めから応えなど期待していないのだろう。微笑を浮か
べながら、小さくなっていく背中を見送る。
ずっとずっと見えなくなるまで。
しばらくそうしていてから空を見上げた。
「神様―――」
突き抜けるような青い空。
この空に人々は希望を、そして夢を見る。
彼もまた、この空の下を行くのだろう。
希望も夢もここに置き去りにして。
だから願う。心から
「どうか、彼に祝福を―――」
地に零れ落ちたひとしずく。
知る者は誰もいない。
おわり
「Vの直前にルックは坊ちゃんに逢いにいっていた同盟」に参加希望した際に
勢いで書いたものです。
ルックが坊にではなく、坊がルックに逢いに行っている上に妄想爆発です。
日本語大丈夫ですかー
頭平気ですかー
ちなみにこの直後の出来事(いい話で終わらせたい場合は読まないで下さい)
セラ 「ルック様っ、ルック様…!どこですか?」
坊 「あれ、君、可愛いねぇ。ルックなんか放っておいて僕と遊ばない?」
ルック「ちょっと、セラに手ださないでくれる?」
坊 「やあ。また会えたね」
ルック「……!」
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