ロウィン・ナイト



注・このお話にはバカップルが多数出現します。
  女性向本気で駄目だわ!という方や、砂を吐きたくない方は見ないことをオススメします
  心の広い方はどうぞ


■シーン1/通路 

 

「ヘルムートさぁんっ!」

 背後から突撃され、ヘルムートは危うく前につんのめりそうになった。首だけ動かして、

後ろを見てみるとユージンが震えながら背中にしがみついている。

「ヘルムートは思った。何だ。この可愛い生き物は」

「妙なナレーションはいれんでいい、ハーヴェイ。……どうかしたのか」

「かかかか……かぼちゃのお化けが…っ」

「…かぼちゃの…」

「お化け?」

 ヘルムートとハーヴェイはユージンが指差した方向に視線を送り、二人同時に目を丸く

した。

「何だ、ありゃ」

「変人か……?」

 かぼちゃの頭をした人間がこちらに向かって歩いてくるのだ。かぼちゃにはご丁寧に目

と口の部分に穴が空いている。

「僕のこと追いかけてくるんですよ…。もう怖くて怖くて……」

「そりゃ怖いわな」

「……斬るか?」

 ヘルムートが剣に手をかけると、かぼちゃ人間は慌てたようにかぼちゃ頭を外した。基、

脱いだ。

「おいおい。冗談の通じない奴だなー」

「やっぱお前か、ジェレミー」

「え…?」

 ユージンは恐る恐るかぼちゃ人間の方を見る。ジェレミーがかぼちゃ頭を抱えているの

を見、安心したのかヘルムートから体を離した。

「ジ…ジェレミーさん……。な…何で……」

「だってユージン、お菓子くれねーんだもん」

「…お…お菓子……??」

 意味がわからない。

「あー。そっか、今日だっけ」

 ハーヴェイは納得したようだった。

「何の話だ」

「そこら辺に張り紙が貼ってあっただろ。今日はハロウィンパーティをやりましょーって

さ。スー様企画で、提案はお前だったっけ?」

「そ」

 ハロウィン。

 どこかの国で伝統的に行われているという行事だ。各々が仮装をし、家を訪ねお菓子を

たかるとかいうものだったような気がする。

 とにかくヘルムートもユージンも話には聞いたことがあった。

「と、いうわけで。今日はお菓子をもらいたい放題!いっぱいもらうぞ〜」

 ジェレミーはかぼちゃをかぶり直すと、嬉々として歩いていってしまった。

「……あいつ、いくつだっけ…?」

「27だな」

「お前と同い年?」

「言うな」

 あの27歳の精神年齢は実年齢の−10歳以下だ。同じにしないでほしい。

 ユージンがヘルムートの腕を引っ張る。

「どうした?」

「えーっと。何だったっけ……。とりっくおあとりーと……?」

 首を傾げながら見上げてくるユージンをヘルムートは思わず抱きしめていた。

 可愛い。可愛すぎる。

「菓子ならいくらでもやるぞ」

「え…!?あ…言ってみただけなんですけど…っ。ヘルムートさん…っ?」

「…ハイハイ。ごちそーさま」

 

 

■シーン2/厨房

 
 
 大量のかぼちゃ。ジェレミーに調理を頼まれてしまったトルスタンは、どうしたものか

と考えを巡らせていた。

「パイとスープ……あとは…」

 なかなかメニューが思い浮かばない。とりあえず切ることにする。

「あの……」

 背後に気配を感じ、トリスタンは包丁を持つ手を止めた。

「腰を抱かないでくれないか……ゴホッ」

「いいじゃないか。……誰もいないし」

「そういう問題じゃないような……」

 トラヴィスはトリスタンの手元を覗きこむ。

「何をしているんだ……?」

「見ての通り料理だ」

「ふーん」

 ……沈黙。

「……邪魔するつもりなら出ていってくれないか…?」

「俺も手伝う」

「えっ!?」

 トリスタンの隣に並び、かぼちゃを手に取るトラヴィス。

 確かトラヴィスは不器用ではなかったか…?

 ―――でも、まぁ切るくらいならできるか。

 その考えが甘かった。

「……トラヴィス。それ、逆さに握ってる……」

「え?だって……こうやって切るんだろう?」

「先を突き刺してどうするんだっ。縦じゃなくて横に遣うんだ」

「……こうか?」

「そう」

「……あ」

「……何でいきなり切るかな……指……」

 駄目だ。まったくもって駄目だ。

 不器用とかそういう問題ではない。

「……ゴホッ。やっぱり、手伝わなくていい…」

「…そうか?じゃあ見てる」

「…好きにしてくれ。ゴホッ」

 料理をするところをじっと見られるのも居心地が悪いが、トラヴィスに手を出されるよ

りはマシである。

 とりあえずスープを作り、味見をしてみる。

「……甘いか?」

「まぁまぁ……って、ちょ…何…っ」

 トラヴィスはトリスタンの顎を掴み、無理矢理自分の方に向かせると、そのまま口付を

おとしてきた。

 彼が離れるとトリスタンは真っ赤になって、口をぱくぱくさせる。

「な……なななななな…っ」

「……うん。……甘い」

 どうやら味見のつもりだったらしい。

「……出てってくれ……本気で……」

 不意打ち過ぎた。ナチュラルにこういうことをされると、心臓が持たない。

「……照れてるのか?」

「ゴホッ!そんなこと……ない」

「顔が真っ赤だ」

「気のせいだ」

 トラヴィスはふっと笑みをもらす。そしてもう一度、トリスタンを抱きしめた。

 

 

■シーン3/個室

 
 
 ノックをしてみると間もなく、シグルドが顔を出した。

「トリックオアトリート」

「……は?」

 わけがわからないというふうに、シグルドは眉をひそめる。ハーヴェイは一度首を傾げ

てから「ああ、そうか」と頷いた。

「そーいや、お前。風邪で寝こんでたんだっけな」

「そーいや…って、ひどいなお前……」

 ハーヴェイはシグルドの額に手の平をあてる。

「何だ。もう熱はないんじゃん」

「…まぁ、それは……」

「じゃあ、今日のパーティも平気そうだな」

「パーティ?」

 状況が飲み込めないシグルドに、ハーヴェイは今晩行われる事を説明してやった。

「ハロウィンか…。話にしか聞いたことはないが……」

「でも楽しそうだろ?ジェレミーにしてはいい考えだよなー」

 無邪気に笑うハーヴェイにシグルドは苦笑する。

「と、いうわけで。トッリクオアトリートな」

「…それって、どういう意味だったかな」

「えーっと、確か”お菓子をくれないといたずらしちまうぞ”って意味じゃなかったか?」

「なるほど。それならお菓子はやれないな」

「はあ?」

 それならって何だ。それならって。

 尋ねようと思ったが、その前に体を引き寄せられた。

 シグルドは妙に艶のある笑みを浮かべ、無駄に低い声で囁く。

「ハーヴェイにならいたずらされても構わない。……むしろしたい、かな」

「ば……っ。…お前な、そういう台詞を素面で言うな!」

「嫌?」

「それは……」

 嫌じゃない。

 嫌じゃないから、真顔で言われると困るのだ。

 ハーヴェイは抵抗するのはあきらめ、シグルドの胸にもたれかかった。

「…風邪移ったらどーしてくれるんだよ」

「ああ。でもほら、馬鹿は風邪ひかないっていうよな」

「殺す…っ」

 

 

■シーン4/甲板

 

「バカップルだらけだな。あー、鬱陶しい」

「僕らも人のこと言えないんじゃないかなぁ」

「……」

 そう言うスーの傍らには大量に菓子が入った袋があった。

「まさかテッドさんがこんなに用意してるとは思わなかったよ」

「うるせ。喜ぶと思ったんだよっ。あー、ちくしょう。馬鹿みたいじゃないか、俺」

 頭を抱え込むテッド。恥ずかしい。恥ずかし過ぎる。

「何で?ちゃんと喜んでるよ、僕」

「え…」

 顔を上げるとスーは満面の笑みを浮かべて見せた。

「ありがとう」

「あ…う……その……。…どういたしまして……」

 

 

 それぞれのハロウィン。

 それぞれの想い。

 今、この星空の下で。

                                おわり

■あとがきという名の言い訳
第1回バカップル選手権(違
シーン1はヘルムート×ユージン(ヘルムートはユージンが可愛くて仕方が無いようです)
シーン2はトラヴィス×トリスタン(トラヴィスさん、セクハラです)
シーン3はシグルド×ハーヴェイ(風邪は移らなかったみたいですよ)
シーン4はテッド×スー(天然さんと照れ屋さん)
皆が皆バカップル。
もう好きにしろよ、お前達・・・
あなたの好きなカップリングはありましたか?(笑
ジェレミーは一人ではしゃいでます。
お菓子大好き(え
ちなみにスーさん。
敬語は直ったけど「さん」付けは直らなかった模様です。
トラヴィスは有り得ないくらい不器用だと萌。

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