ビュッテヒュッケ城の劇場。

 演目はロミオとジュリエット。

 ロミオ役はシーザー・シルバーバーグ。

 そしてジュリエット役は――

「おい、こら。待て」

 テラスに現れた長身の人間を仰ぎ、シーザーは額に青筋を浮かべていた。

「お前のどこがジュリエットだっ!」

 赤毛の妙に体格のいいジュリエットは「ふっ」と前髪をかきあげる。

「何を言う。どこからどう見ても可憐な乙女ではないか」

「言ってろ……っていうか何でお前がここにいるんだよっ!?」

 そう。シュリエットの正体は、何とシーザーの兄・アルベルト・シルバーバーグだった

のである。

「無論。お前への愛を叫びにだが」

「光速で俺の前から消えてくれ」

「ああ、シーザー。何故お前はシーザーなのだ?」

「普通に進めんなっ!」

 肩で息をしながら激しく突っ込むシーザー。まぁ、この兄には何を言ってもムダなよう

な気もするが……。

 アルベルトはカンペらしきものを見ながら、なおもセリフを続ける。

「お前が家名―――。おい、この脚本間違っているぞ。家名を捨ててしまったら、私とお

前の兄弟という強い繋がりが絶たれてしまうではないか」

「あーそうだな。俺は今すぐ底無し沼にでも捨てたいよ」

「そうか、シーザー。塀をよじ登ってまで私に会いにきてくれたのか」

「その塀が100mくらいあったらここに来なくてすんだのにな」

 シーザーの畳み掛けるような嫌味にも、アルベルトはまったく動じなかった。

「ここに来たら殺されるかもしれないのに、そんなにも私のことを……」

「上手く逃げるさ」

 この目の前の変態兄貴から。

 シーザーは靴がきちんと履けているかチェックする。

 兄から逃れる策は一つしかない。

 全速で逃げること。

 捕まる確率99%だが、たとえ1%の可能性でもかけてみる価値はあった。

 ――客席に逃げた方が幾らか分がいいな

 策は成った。

 今こそ出陣―――

「シーザーよ、兄の愛を受け取れ!!」

 走りかけていたシーザーに……

「へ?」

 大きな影が降った。一瞬本気で息が止まる。

「ちょ……っ、重……!」

 弟の体に飛び降りるなんて、どういう神経をしているのだろう。

 死んだらどうしてくれるんだ……!!

 シーザーはアルベルトの顔を手で押しのけた。

「とっととどけ!アホベルト!!」

「どうだ。兄布団は気持ちかろう」(←意味不

「地底深く沈めてやろうか……?」

 もはや劇でも何でもない。シーザーは舞台そでにいるナディールに「幕を降ろせ」と目

配せする。しかしナディールは無情にも「続行」サインを送ってきた。

「ありえねぇっ」

「恥ずかしがるな、シーザー。兄弟のスキンシップは必要なものだ」

「それ以上、顔近づけやがったら殺すっ!」

 押しのける手に力をこめるシーザー。

 ちょうどその時、幕間で待機をしていた乳母役のアップルが異変に気づいたのか舞台に

姿を現した。

「あ…っ、アップルさん!助け―――」

「あらあら、じゃれあっちゃって……。まるで昔に戻ったみたいね」

「は……?」

「何だかんだ言って、シーザーもお兄さんのことが好きなのね。素直じゃないんだから」

「ちょ…アップルさんっ、待っ……」

「兄弟仲良くが一番よv」

 アップルは「ふふふ」と笑うと舞台上から消えていく。

「さぁ、朝までこの兄と語り合おうではないか。我が弟よ」

「アップルさんの裏切り者ぉぉお〜!!」

 劇場内に悲痛な少年の声が響き渡った。

 

 その後2週間、シーザーがアップルと口をきかなかったのは言うまでもない。

 

 

                                 おわり

 

兄ファンの方ごめんなさい。兄を壊し過ぎました……(笑

私的にはこの位がちょうどいい感じなんですが(え

演劇っていうとやっぱりロミジュリですねv

シーザーロミオのやる気の無さがツボです〜

どうでもいいことですが、よく「アルベルト」を「アルベルお」と打ち間違えます…。

誰…!?


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