だいま


 久々に我が家への道をたどる。

 2年ぶりの故郷。

 街並みは少しも変わっていない。

「よぉ、アル。久しぶりだな」

「留学から帰ってきたの?」

 声をかけてくる人々に丁寧に会釈を返しながら、アルベルトは一つの店に目を留めてい

た。

 小さなパン屋。

 彼の弟、シーザーはこの店のパンが好きなのだ。

 ―――買っていってやるかな

 2年ぶりに会うわけだし。

「お姉さん、このパン一個ください」

「こんにちは、アルくん。シーザーくんへのお土産?」

「ええ……まぁ」

 苦笑するアルベルト。

 普通ならハルモニアの物を買ってくるものなのだろうが、シーザーの口に合いそうなも

のが見つからなかったのである。

 シーザーはまだ11歳。

 物より、食べ物の方が喜ぶだろう。

 パン屋の娘は微笑みながらアルベルトに包みを渡してやる。アルベルトは軽く礼をする

と、再び歩き出した。家まであと少しというところで、ふと立ち止まる。

 前方に人影。見知った顔だった。

「アップルさんっ」

「…アルベルト?」

 アルベルとは小走りでアップルに近寄る。

「いらっしゃってたんですね」

「ええ。今日だったのね。留学から帰ってくるの」

「はい。えっと……」

 カバンの中をごそごそとあさるアルベルト。小さな箱を取り出し、アップルに差し出し

た。

 

「ハルモニアのお土産です。ブローチなんですが、アップルさんに似合うと思って……」

「あら、ありがとう」

「シーザーは元気にしてますか?」

 アルベルとの問いにアップルはうなずく。

「ええ。でもね、やっぱりお兄さんがいなくて寂しかったみたいよ。よく”アル兄、まだ

帰ってこないのかなぁ”ってすねてたわ」

「そうですか。なら早く帰ってやらないと」

「そうね」

 苦笑するアップルに深くお辞儀をすると、アルベルとは家に向かって歩き出した。

 

 ドアを軽くノックする。

 彼が顔をだすまで、そう時間はかからなかった。

 2年前よりかなり背が伸び、顔つきもいくらか大人っぽくなっている。

 玄関まで走ったのだろう。

 シーザーは頬を紅潮させてにっこり微笑んだ。

「おかえりっ、アル兄」

 ずっと兄の帰りを待っていたのだろうか。

 アルベルトは嬉しそうな弟の頭を優しく撫で―――

 

「ただいま」

 

                           おわり

 

私的設定でいきますと、兄は16歳〜18歳の間、留学ということになってます。

はい、私が勝手に決めた設定です(笑

赤毛軍師兄弟は近所の人と仲がいい。

これも私的設定でございます。

シーザーとかね、よく家を抜け出して遊びに行くわけですよ。

で、雑貨屋のおばさんとかにお菓子もらったりするの。

ははは、妄想ですね〜

ちなみにそのうち書くであろう「おかえり」はこの話のシーザー視点になる予定です


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